だが、そのひとつ手前…トム・ベルがリタイアした元保安官の叔父に会いに行った際に、この叔父が語った言葉だけは、ストレートに心に届いた。
「人間というものは、奪われたものを取り戻そうとして、さらに失ってしまうものだ」
これは、間違いなく真実だ。
今になって思い起こすと、僕はまさに奪われたものを取り戻そうとして、ますま す失うような人生を送ってきた。自分の受けた屈辱のぶんだけ、手に入れ損なった敬意のぶんだけ、何とか尊敬や賞賛を得たい…と、子供の頃から悪あがきを続 けてきた。ナメられたくないと必死にもなったし、ホメられたい認められたいと背伸びもした。それが単なる虚栄だったり見た目だけの成功だったり、ウツワに 見合ってない評価だとは気づかなかった。自分が恥をかかされた、ナメられた、裏切られて笑い者にされた、あるいはもう一歩でその成功を取り逃したと気づい た時は、自分の立場もわきまえず後先考えずにキレまくって、自分を含めた周囲をメチャクチャにした。
あるいは失われつつある愛を何とか取り返したいと、水の泡になるばかりの無駄な努力を費やした。
それはどこか、下手な博打打ちの賭けっぷりに も似ていた。最初に勝った時のオイシイ思いが忘れられず、あるいは元々持っていた手持ちの金額への未練を捨てきれず、負けたぶんだけ…いやいや、負けたぶ ん以上取り返して見返そうとするから、さらに深みにハマって大損する。そして大損するから、さらにそれを見返そうとしてもっと大きな火傷をする。
結局は、人生はじっと黙って我慢するしかない。
そんなことを改めて思い起こさせてくれただけでも、この映画は僕にとって価値があったかもしれないのだ。
”